肩こりを科学するブログ

五十肩の原因・症状・治し方②「五十肩の病期に応じた効果的な治療方法~肩が痛くて1ヶ月以上通院しても改善しない方へ~」

五十肩の原因・症状・治し方②「五十肩の病期に応じた効果的な治療方法~肩が痛くて1ヶ月以上通院しても改善しない方へ~」

前回のブログ記事『五十肩の原因・症状・治し方 ①五十肩とは』では、五十肩という言葉の解説と発症する原因と大まかな治療方法について述べました。今回は、効果的に五十肩を治療するための具体的な治療方法についての解説です。

病院に行っても五十肩がまったく良くならない!!治らない!!方が多いのは、明確な理由があります。現在治療中の方はもちろん治療をお考えの方は、五十肩はどうやって治していくものなのか?についての知識を身につけてください。

五十肩と気軽に言う場合が多いですが、実は奥が深い五十肩(四十肩)

肩を動かすと痛い、何もしていなくても肩が痛い、以前動かせたように動かせなくなっている、といった症状のうち骨自体でなく、関節包、肩関節の周囲の筋肉に原因があるものを五十肩(四十肩)といいます。難しい言葉で四十肩・五十肩を説明しますと「五十肩(=凍結肩=癒着性関節包炎)とは関節包の肥厚・短縮・硬化を主病態とし、肩痛・可動域制限を主訴とする疾患」となります。

正確な統計ではありませんが、広義の五十肩は一般集団における有病率は約2%、そのうち実際には4分の1程度が凍結肩だろうといわれています。中高年に限定すれば5人に1人が何かしらの肩の痛みがあるというデータもあり、五十肩・四十肩で患っていらっしゃる方が相当多いと解釈できる数値です。

五十肩は経過と共に症状が変化するのが特徴です。

①急性期 → 疼痛が主体で可動域制限が進行する(6週~9ヶ月)

②拘縮期 → 可動域制限が著しく進行する(4~6ヶ月)

③回復期 → 疼痛・可動域制限ともに軽快する(6カ月~2年)

五十肩は、このように3つの病期に分けることができます。いつのまにか痛みが治まってきたと感じるのが、回復期にあたります。

五十肩を治すためには、この3つの病期に対して適切な治療を行う必要があります。これはとても大切なポイントです。

五十肩は自然治癒するの?という疑問にお答えします。

病期についての説明で「回復期」という言葉にピンときた方は、五十肩は自然に治ると聞いたことがある方でしょう。実際、五十肩の痛みは、自然と治まる場合があります。痛みがある、というのは五十肩の症状の一つでしかありません。痛みが治まる=五十肩が治った、ではないのです。

治療を行わずに放置して痛みが自然消退した場合、ほぼ確実に肩関節の可動域制限が生じています。痛みは引いたけれども、元のようにスムーズに動かない、肩を真上にピっと垂直にあげることができない、腕が耳につかない、といった状態となります。(実際は肩が90度まで動けば肘による代償で日常生活はこなせるようになるので、意識されていない方もいらっしゃるはずです。)

なぜ、動かすことのできる範囲が制限されてしまうのかと言いますと、五十肩の痛みをかばうことで、長期間にわたって肩関節を動かさないようにしてしまうためです。肩関節を長い間動かさないでいますと専門用語で「関節拘縮」が生じます。関節拘縮は「関節包の癒着が生じてしまう」状態を指します。関節包の癒着が生じてしまった場合は、基本的には医師による外科的処置を施さなければ回復は見込めません。

関節包に問題が残るだけでなく、筋肉にも悪影響が出ます。つまり、肩を長期間動かさないことで、インナーマッスルなど動かすために重要な筋肉が衰えるのです。これは単純に筋力の衰えと思われるかもしれませんが、筋肉を鍛えれば元に戻るというわけでもないのです。実は、筋肉を正しく動かす能力自体が衰えてしまうことにもつながるのです。

ですから、自然治癒するから、と何もせずの放置は禁物です。回復期を待つのではなく、拘縮期に治療することがベストです。繰り返し申し上げますが、五十肩は、「痛みがなくなる」=「完治」ではない点を是非ご理解いただきたいと思います。

何事にもあてはまりますが、治療を行うにあたり発症して時間が経てば経つほど完治への道のりが遠のきます。関節の癒着が生じてからですと、治療にも限界があるのは・・・残念ながら事実です。理想は拘縮期の初期から治療を開始するのがベストです。

五十肩の効果的な治療方法とは?

五十肩の治療は、病期によって異なります。急性期、拘縮期、回復期の3つの病気における最適な治療方法をご説明します。

①急性期(6週~9ヶ月)における治療方法

一般的に急性期の凍結肩は動作時だけではなくじっとしていても痛く、夜間痛を生じる場合が多く、痛くて眠れずうつなど精神症状へとつながっていってしまう場合があります。五十肩を患っていらっしゃる方にとって、最もつらい時期です。

つらいことに、実際は、急性期は「何をしても痛いし、どんな治療をしても効かない」という状態です。そのため当初は非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などによる痛みに対する対症療法が行われます。

急性期は整体やカイロプラクティックはもちろん、鍼灸マッサージ治療を行っても鎮痛効果は期待できません。

急性期に鍼灸マッサージ治療を行った場合、たしかに施術直後は一時的に痛みが引くことはあります。しかし結局は数時間後には元に戻りやはり痛い状態となり疼いてしまう場合がほとんどです。これは根本治療ではありません。

そのため特に急性期は整形外科に行くことが最も痛みから解放される手段なのではないでしょうか。

②拘縮期(4~6ヶ月)における治療方法

拘縮期に入ると、“何もしないでも痛い”状態からはやや解放され、治療は主に運動療法が行われます。同時に鍼灸マッサージ治療も適応となります。

正確には鍼灸マッサージ治療は急性期と拘縮期の移行時期に最も有効であると考えております。

急性期の終盤「一時の激痛は少しおさまってきたが、動かすと痛い」という状況になります。それ以降、急速に関節の拘縮(固まって動かなくなること)が進行します。一度、関節拘縮が生じてしまうとそれを元通りにするのは非常に困難です。残念ながら、完全な可動域までの回復が難しくなります。

ですので、症状が変化する、急性期→拘縮期に移行するタイミングにおける“痛みの管理と関節拘縮の予防”が重要です。そのための手段として鍼マッサージ治療は効果を発揮すると期待できます。

鍼・マッサージで痛みが緩和できる理由

鍼灸マッサージ治療とは「筋肉をゆるめる」と「血流を増加させる」の2点に特化した治療方法です。これにより痛みも軽減されることが期待されます。

なぜ、痛みが緩和されるのでしょうか?

人間は痛みを感じると条件反射によりその部位付近の筋緊張が高まります。肩関節は他の関節と異なり、筋肉によって支えられている割合が多いため、肩をとりまく筋肉の状態により可動性は大きく左右されるのです。

また、肩の動きは“肩甲骨の動き+上腕骨(腕の骨)の動き”によって成り立っています。(これを肩甲上腕リズムまたはコッドマンリズムといいます)

五十肩にお悩みの方はその痛みに対する防御と長期間肩動かさないことからほぼ全員に肩甲骨の硬化が生じます。(肩甲胸郭関節の拘縮が生じます)

運動療法・リハビリの効果が出ない原因は「肩甲骨」にあり!

肩の動きのうち、三分の一は肩甲骨の動きに頼るものです。気をつけの姿勢からバンザイのまでの角度を180度としたら、60度は肩甲骨が動くことによるものです。裏返せば、いわゆる肩関節(肩甲上腕関節)のみでは人体の構造上120度しか動かないのです。

五十肩、四十肩、肩甲上腕リズム、コッドマンリズム コッドマネクササイズ 出典:ameblo.jp

そのため肩甲骨がきちんと動かなければ運動療法をしようにも、そもそもうまく動かすことができず、効果を期待できません。

リハビリにて肩を動かす運動を処方されても一向に変化がないか、動かしたくてもうまく動かない、あるいはある程度動くようになったが頭打ちとなったといった場合は、肩を動かす前段階として肩甲骨が動いていない可能性が高いです。

よって積極的に運動療法を行う拘縮期となる少し前から“肩甲骨の可動性”を確保するための鍼灸マッサージ治療は有効であり、併用して行うことで運動療法の効果を高めることにもつながり、結果的に完治までの期間を早めることにつながると考えられます。

五十肩、四十肩、凍結肩、按摩、マッサージ 出典:www.yogawiz.com

肩甲骨の可動性と共に重要なのが腕の骨(上腕骨)と肩甲骨を連結するいわゆる肩関節(肩甲上腕関節)を円滑に動かすために必要なことはインナーマッスルの活性化です。

インナーマッスルの「強化」ではなく「活性化」とした理由

多くの場合、筋力を高めるためにはトレーニング=筋肉に負荷をかけて縮ませることが第一選択肢となります。

しかし五十肩のように関節をあまり動かさない状態が続くと、関節だけではなく筋肉も硬くなり本来の「伸縮性」が失われてしまいます。ギュッと縮まってしまっている筋肉を、さらに負荷をかけて縮ませても効果は半減です。

筋力トレーニングの原則として、まず筋肉が適切に伸長する必要があります。伸長された筋肉が縮まる際に負荷をかけることで効果の出る適切な筋力トレーニングが可能となります。

このため、筋肉を「強化」する前段階として「活性化」が必要になります。

このような「活性化」、つまり硬くなって伸縮という正しい機能を失ってしまっている筋肉を回復させるために鍼灸マッサージ治療は有効といえます。

筋肉の正常な伸縮性を取り戻してからトレーニングすることにより、インナーマッスルトレーニングの効果を促進することが可能と考えられます。

五十肩の拘縮期における鍼治療とマッサージ治療の目的は以下の3点にまとめることができます。

  1. 鎮痛と運動療法の補助
  2. 肩甲骨の動きの回復
  3. 筋肉の伸縮性を正常化

鍼とマッサージはこの3点において大変有効ですから、拘縮期から回復期へスムーズに移行できるのです。

③回復期(6ヶ月〜2年)における治療方法

回復期には、可動域が回復し、完治にむかう時期です。患者さんとしては肩を苦なく動かせるようになってきて、日に日に良くなってくるのが実感できる時期です。

治療の内容は、関節可動域の拡大とスムーズな動きを目指し、積極的な可動域訓練と筋力トレーニングをメインに行います。

特にインナーマッスルの機能回復、前後左右の対になる筋力(force couple mechanism)の関係性を整えることに重点を置きます。

肩局所だけでなく、姿勢や日常の動きなど全身に対するアプローチも行います。

この時の鍼灸マッサージ治療は、可動域を高めるための補助と筋力トレーニングによって疲労した部分の回復が主な目的となります。

治療の主軸は運動療法です。動かしにくさを補助して動きを円滑にすることがポイントです。二次的な痛みを予防する上で鍼灸マッサージ治療はとても有効なのです。

運動療法の効果が全く出ない!!病院でも五十肩が治らない原因

病院のリハビリなどでアイロン体操(=コッドマンエクササイズ=ぶん回し体操)や棒体操などのストレッチなどを行うように指導され、一生懸命行っても一向に変化が出ないことが大半かもしれません。これまで述べてきた通り五十肩の治療でもっと大切なことは病期と痛みの原因の把握です。運動療法の効果がない、一向に良くならない場合は、そもそも「五十肩の病期とその処置」「痛みの原因とその処置」が合致していない可能性大です。

アイロン体操↓

棒体操↓

五十肩は放っておいてもいつかは痛みがおさまることが多いため、軽視されがちです。

その治療方法も「五十肩・四十肩といえば〇〇」といったように昔から良いと云われ続けてきた方法がマニュアル的に行われていることが多いですが、肩こり同様最終的に「年齢のせい」ということでうやむやになっているのが現実でしょう。

五十肩が治らずに当院に駆け込んでいらっしゃる患者さんに経過を伺うと「リハビリに通ってもいつもの流れ作業の治療で、一向に病状が改善しない」とおっしゃられる方がとても多いです。

重大な疾患でなくとも、慢性的な痛みは精神症状へと影響を及ぼします。

五十肩・四十肩を軽視せず、その状態を入念に評価し「原因に対する処置」「病期に合わせた処置」を適時行うこと、これが本当に大切なのです。

ここまでは鍼灸マッサージをはじめとした徒手療法や運動療法などの保存療法について述べてまいりましたが、これらで十分な改善効果が得られない場合に限って、全身麻酔下による授動術(徒手的な関節包破断;マニピュレーション)や、全身麻酔下による関節鏡下関節包解離術が治療の選択肢となります。

とはいえ、こうした治療は入院が必要であることなどから、これまでは“最後の手段”とされているというのが現実です。このような中、最近では手術が適応となる症例へ、サイレント・マニピュレーション(神経ブロック下授動術)という治療方法が行われているようです。サイレント・マニピュレーションについは以下で記載しております。

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最後まで、お読みいただきまして、ありがとうございます。

今回の記事はお役に立ちましたでしょうか?また、身の回りの方、ご家族で五十肩でお悩みの方がいらっしゃいましたら、当記事の内容を教えてあげてください。

by
katakoriLabs

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