肩こりを科学するブログ

体操・ストレッチ・温熱療法など血行改善により肩こり・首こりが解消されない理由 (医学的根拠に基づき神経生理学の観点から解説)

体操・ストレッチ・温熱療法など血行改善により肩こり・首こりが解消されない理由 (医学的根拠に基づき神経生理学の観点から解説)

あべこべ体操の効果を検証

首や肩がこる原因は血行が悪いから?では血行を良くしても治らないのは何故?

多くの方々が「血行が悪いから肩こり・首こりが起こる」という解釈をしておりますが、以前から私はそれに疑問を抱いていました。

確かに血行不良を起こしているとその部分は痛みや違和感を覚えます。慢性的な肩こり・首こりを自覚している方は、肩甲骨から上部の広範囲にわたって不快感や痛みを自覚しています。その部分を温熱療法により血行を良くする処置を行うと、気持ち良く、一時的には症状が軽減されます。大事なことですので、もう一度言います。あくまで“一時的”なのです。

慢性的な方であれば皮膚温度が戻るやいなや、症状はすぐに元通りとなってしまいます。よって、この場合は温熱刺激により痛みを感じる境界線(疼痛閾値:とうつういきち,Pain Thresholdを引き上げているにすぎません。

肩こり・首こりの症状は筋肉の硬さと必ずしも相関関係がありません。

以下に3つの根拠を挙げます。

筋肉がやわらかくても猛烈な症状を自覚している方がいる。反対にとても硬くなっていても、症状を全く自覚していらっしゃらない方もいる。

筋肉を徹底的に弛緩させる施術を行い、物理的な“硬さ”が減少している状態でも、発作的に症状が出現してしまう方がいる。

慢性的な症状を自覚している場合、その筋肉に対して様々な刺激を加えても、反応性が鈍く、緊張、弛緩共に変化が起こらない(起こりにくい)方が多いという事実。

身近で分かりやすい例でいいますと、猫背などで姿勢が見るからに悪い方でも、全く肩こり知らずの方はいます。逆に、とても姿勢がよく、体のバランスがよいのに、肩こりで悩まれているという方もいます。力学的に良好な姿勢を維持しても症状を自覚する場合もあれば、逆に力学的によろしくない姿勢でも症状が出ない場合もあるということは、ご理解いただけると思います。

そこで私は、仮説をたてました。

丸山太地の仮説

肩こり・首こりの“ジンジンするような痛み、不快感”という症状そのものは、血行不良により蓄積する疲労物が感覚神経を刺激して生じる。

しかし、その根本的な原因は『血行を調整する機能』『筋肉の動きを調整する機能』の異常にあるのではないか?

この仮説を、もう少し具体的に説明いたします。

仮説:『自律神経系の異常』と『運動神経系の異常』の2つが、肩こりの原因である。

まず、血液の流れは、生命を維持する上での根幹のひとつです。血液の流れのことを血流または血行といいます。

そして、自律神経。自律神経という言葉は広く認知されています。自律神経は、常に働いている神経です。起きている時も寝ている時もです。自ら律する神経という名前の通り、人が意識しなくても自ら機能しています。

神経というとイメージは掴めるけど具体的にはよくわからないという方が多いと思います。ごくごく簡単に説明いたしますと、脳や脊髄にある神経(中枢神経)とそれ以外の体の各所にある神経(末梢神経)に便宜的に分けられています。抹消神経も、体性神経と自律神経の2つに分けられます。運動神経というのは体性神経のひとつです。ここで注意していただきたいのが、運動神経という言葉です。スポーツ万能の人を運動神経が良い、と表現しますが、それではありません。筋肉の動きを調整する神経のことを解剖・生理学的には運動神経と呼びます。

血行と自律神経は、密接な関係にあります。血行が悪くなれば、自律神経が乱れます。自律神経が乱れると血行が悪くなります。

ですので

『血行を調整する機能』の異常 ⇔ 自律神経系の異常

が自然な考えだと思います。

さらに、

『筋肉の緊張(硬さ)を調整する機能』の異常 ⇔ 運動神経系の異常

も存在するのではないか?と考えました。 こちらにつきましては当ブログの別記事「鍼灸マッサージ治療裏事情(1) 硬ければ重症か?コリのメカニズムを神経生理学の観点より解説」をご覧ください。)

この2つを合わせてまとめますと、

慢性的で治らない肩こり・首こりの根本原因は「姿勢が悪い」「筋肉が硬い」「体のゆがみ」「血行が悪い」「冷えている」といった表面的な問題だけではなく、体を調整する“機能の異常”である。

という考え(仮説)に辿り着いたわけです。

『自律神経系の異常』と肩こりの関係性を裏付ける研究論文を発見

この仮説の検証を続けていたところ、自律神経系の異常と肩こりの関係性を裏付ける文献が見つかりましたので今回はそれをご紹介させていただきたいと思います。

名古屋学院大学 リハビリテーション理学部 理学療法科による研究論文 [BMC Musculoskelet Disord 2012;13:146.]です。

この研究が示唆することは

慢性的な肩こり・首こりを自覚している方とそうでない方の首肩の筋肉(僧帽筋)に負荷をかけたところ、両者が共に血行不良が生じ、その差はなかった。
肩こり・首こりの有無に関わらず筋肉に負荷がかかった時は筋疲労が起こる。
筋電図所見上、慢性的な肩こり・首こりを自覚している方とそうでない方に筋収縮の様式に差は無く、筋収縮時は、両者は共に筋血流量は増加した。
“慢性化”の決定因子は単純な局所血行障害ではない。
慢性的な肩こり・首こりの方は、そうでない無い方に比べて負荷終了後、回復時の酸素化ヘモグロビンと総ヘモグロビンが少なかった(=対照と比較し血行が悪かった)
慢性的な肩こり・首こりの方はコッている筋肉の有酸素性の回復能力が低く、筋疲労の回復が遅い。
肩こり・首こりの症状の無い方は運動後に交感神経の活動が亢進したが、慢性的な肩こり・首こりの方は変化しなかった。
運動することにより交感神経の活動が亢進することは正常な機能であり、それにより筋肉内の血流が増加し、筋に酸素や栄養素を送ると共に疲労物質を排除する働きをする。 よって慢性的な肩こり・首こりの方は運動終了後、筋肉内の血流が増加せず、組織が酸素欠乏するとともに各種疲労物質が蓄積しやすい状態となっているため、いつまでも疲労から回復することができない状態となっている。

の4点です。

今回ご紹介した自律神経系の異常と肩こりの関係性を裏付ける論文のまとめ

肩こり・首こりの症状有無に関わらず、負荷がかかると両者は同様に筋疲労し血行は減少するが、負荷がかからなくなった時にいかに血行が回復するかどうか差が生じることとなる。

その原因は自律神経、特に交感神経が適切に働かないことによる。

ということです。

人間であるため、同一動作や不良姿勢を続けることにより限られた部分へ持続的な負荷が加わった場合、そこが疲労するのは正しい生理現象です。 (2リットルのペットボトル3本入った袋を長時間持っていたら腕の筋肉が疲労しパンパンになるのが至極当然のように、体重の約10%(5~7kg)の重量がある頭部を不合理な方法で支え続けたら、その部分は誰しもが確実に疲労します)

そのため慢性化している方ほど疲労やコリが休息によりリセットされることなく“永遠に蓄積され続けてしまう”ということが重症と軽症を隔てる要素です。

よって慢性化を左右する因子は『血行を調整する自律神経の異常』なのです。

しかしながら興味深いのは、今までは“慢性化している肩こり・首こりの方は交感神経が異常に働きすぎている”という見解が一般的だったにも関わらず、本研究では“交感神経が適切に働かないこと”が要因だとしています。

これらをふまえまして私は、

①自律神経は交感神経と副交感神経が相互に働きあって相対的な優位性により機能を調整するため、慢性的な肩こり・首こりの方はどちらか一方ばかりが優位になっているのではなく、適切な時に適切なバランスで自律神経が作用できなくなってしまっているのではないか。

②そのため重症の肩こり・首こり患者さん程、頭痛・めまい・吐き気・胃腸の不調・全身倦怠感などといった自律神経失調症の症状も同時に抱える場合が多いのではないだろうか。

と考察しております。

交感神経=ストレスといったイメージがもたれやすく敵視されやすいのですが、筋肉の血行は交感神経により支配されているため、その働きは必要不可欠です。

慢性的な肩こり・首こりを治すためには、単に体のハード面(筋肉・姿勢・骨格・血行など)だけではなくソフト面(機能・自律神経・運動神経・精神など)をまでを視野にいれた治療の必要性が裏付けられました。

一般的には、肩こり解消方法というとストレッチや体操などの筋肉を動かす事や温めることにより、血行改善を図り改善されると認識されています。しかしながらそれで改善される方は極少数なはずです。そのような処置で肩こり・首こりが解消されない理由は、根本原因である自律神経の不調あるからなのです。

疲労が蓄積した時などに、たまに「首肩がつかれたな。もんでほしいな。」と思われるぐらいの方でしたら、体操(ストレッチ)や温熱療法で改善してしまいますが、心底お悩みで藁をもつかむ思いで肩こり解消方法を調べていらっしゃる方には残念ながら効果は無いとお考えいただいたほうが良いかもしれません。

体操やストレッチ、温熱療法によって少なからず自律神経にとって良い反応は起こりますが、慢性的な肩こり・首こりを患っていらっしゃる方はそれだけでは不十分です。しっかりと自律神経を整える治療並行して行う必要があります。

結論

慢性的な肩こり・首こりは、○○秒でできる簡単な体操やストレッチ、温め(温熱療法)のみでは、完治はありえません。一時的には楽になるかもしれませんが、治らないので繰り返すことでしょう。すると、だんだん、慣れてしまい、コリが悪化する可能性があります。

気軽に感じる肩こり・首こりですがそのメカニズムはとても複雑で、治すためにはその本質を患者さんご自身にもしっかりと理解していただく必要があります。

YouTubeやテレビでは様々な処置や対処方法、体操などが推奨されています。しかしながら、それらを行っても、根本的には改善されないということ、つまり、コリの原因そのものを的確にとらえられていない可能性があります。そもそも原因は人によって様々です。

簡単に治る体操は、定期的に流行るものかもしれません。雑誌でも特集が組まれることもあるでしょう。それが本当に効果があるなら、誰も苦労しません。肩こり、首こり、腰痛などで苦しんでいる人は増え続けています。これが現実です。一時的な、安らぎ、リラクセーション効果を求める人は多く、それを狙ったビジネスが盛んですが、私は真剣に治したいという強い思いで治療にのぞんでいます。

肩こり・首こりとはどのようなものなのか、その根本をとらえたい方はこちらをご覧ください。 →「確実に肩こりを解消するために必要なこと

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katakoriLabs

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